失敗しない注文住宅の予算の決め方と資金計画の立て方
マンションでも注文住宅でも、「頭金0円」と宣伝している販売会社を見かけるようになって久しいです。まとまった貯蓄がない人でもマイホーム購入を検討できるので、とても嬉しいプランでもあります。
ですが、頭金がないぶん月々のローン支払い額は増えるということも忘れてはいけません。
そして、住宅ローンは借入金額が多いほど、支払う利息も多くなります。つまり、同じマイホームを買っても、頭金を入れなかった場合には、利息分が上乗せされてしまうのです。また、固定金利の代表的な住宅ローン「フラット35」は、借入額が購入額の9割を超えると金利が高くなってしまいます。大手銀行やネット銀行の住宅ローンも、借入額が購入額の8割を超える場合は金利が上乗せされると言われています。
以上のことから、頭金を用意できるに越したことはありませんが、「頭金0円」が必ずしも良くないというわけではありません。結局は、無理なく支払いができればいいのです。資金計画をきちんと立てて、背伸びしすぎず、月々の支払いが無理のないような金額の物件を購入すれば問題ないと言えるでしょう。
では、頭金を支払う場合、どれくらいの金額を用意しておけばいいのでしょうか?一般には、住宅ローンの頭金は物件価格の2割程度あればいいとされています。ローンの支払額も、年収の2割程度だと無理がない資金計画が立てられます。
例えば、年収450万円の場合は、月々のローン支払いが7.5万円~11万円程度までが無理のない計画と言えるでしょう。一般的には、住宅ローンの総借入額が100万円増えると、だいたい月々の支払いが2,500円増える計算になると言われています。
この割合を目安に、注文住宅にかけられる費用を算出するようにしましょう。なかなか自分で全てを考えるのは難しいかもしれません。そんなときは資金計画もしてくれる注文住宅会社や金融機関に相談して、ゆとりのある返済計画を立てましょう。
ライフプランも考慮して資金計画を立てていく
「頭金はいくら用意できるか」「月々支払えるローンはいくらか」といった資金計画は、現在の収入・支出で考えがちです。しかし、それ以上に重要なのは、将来のライフプランを考えることです。
子供がいる世帯なら、一番大きいのは教育費用と言えるでしょう。教育費用は、進学する学校が私立か公立か、大学に行くか行かないかでも大きく変わってきます。教育費以外に、結婚費用も援助するかもしれません。
他にも、定期的に海外旅行へ行きたいなら旅行費用、両親の介護費用、自分たちの老後費用についても検討する必要があります。ライフプランを立てて、生涯で必要な金額を算出したうえで、住宅にかけられる費用を決める、というのが堅実です。
人生は、想定外のことのほうが多く、思わぬところでお金が必要になります。だからこそ、それに耐えられるような資金計画を立てることが重要です。注文住宅会社では、将来の家計まで考慮したファイナンシャルプランを考えてくれるところもありますので、そのようなサービスがあれば存分に活用するようにしましょう。
予算は年収の5倍って本当?
年収から購入予算を逆算する方法として、よく言われるのが「年収の5倍」という目安です。しかし、本当に年収が500万円の人も、1,000万円の人も、同じ目安で当てはめて考えて間違いないのでしょうか?
年収が低いとその分光熱費や保険料などの生活固定費の比率が高くなるため、同じ5倍でも返済額によっては大きく家計を圧迫する可能性が出てきます。
あるいは、「月返済額が年収の25%以下」というのもよく聞かれる目安のひとつですが、これも返済期間や借入時の年齢などが異なる人をひとくくりに考えるのは誤りです。借入期間が35年と25年とでは計算が変わってきますし、借入時の金利によっても返済額は上下しますね。
この誤差を理解しないままに、数値を式に当てはめて「購入予算の目安」としてしまうのは大変危険です。
頭金の占める割合、返済期間、借入時の年齢や家族構成などにより、無理のない借入額というのは大きく異なりますので、年収や返済額に偏った目安を決して鵜呑みにしないよう注意しましょう。
注文住宅にかかる費用の内訳
注文住宅にかかる費用の内訳を知ることも、おおよその予算を決める大切な手段のひとつになります。注文住宅にかかる主な費用は、以下の通りです。
土地購入費用
住宅を建てる土地の購入代金です。2017年度フラット35利用者調査によれば、茨城県の土地取得費用の平均は820.3万円ですが、この他に、以下のような費用がかかります。
- 印紙税
- 土地の売買契約にかかる印紙代です。土地の価格によって変動しますが、1,000万円~5,000万円までの税額は1万円になります。
- 仲介手数料
- 土地の売り主と買い主の間に不動産会社を仲介している場合、その仲介業務の対価として対して発生する費用で、売買契約時、引き渡し時にそれぞれ半金を支払います。土地価格の3.24%+6.48万円を上限と定められています。
- 登録免許税
- 不動産取得で登記をしたときにかかる税金で、固定資産税評価額×税率で割り出すことができます。
- 登記手数料
- 土地や不動産の所有者を登記簿に記載し、所有権を得るための手数料です。
- 固定資産税
- 引き渡しの際に、固定資産税や都市計画税の清算時に日割りした金額を売主に支払います。
- 地盤調査費用
- その土地が家を建てられる状態にあるかどうかを調査するための費用で、5万円前後が相場と言われています。
- 地盤改良工事費
- 地盤の強度が不十分な場合、家を建てられる状態に補強するための費用で、深さ2m~8mくらいであれば、一坪あたり3~5万円ほどが相場と言われています。
- 解体工事費用
- その土地に古い建物がある場合、これを取り壊すための費用です。「更地渡し」といって売主が負担するケースもありますので、古屋がある場合には事前に売主側と相談するようにしましょう。
建築工事費
建築工事費は、工事費の内の75~80%を占める「本体工事費」と、残る15~20%を占める「別途工事費」に分けられます。
本体工事費は、基礎工事や断熱工事、内外装といった、建物そのものにかかる工事費用を指し、別途工事費は外に水道管やガス管などを引き込んだり、庭の石垣や植栽などを行う場合にかかる費用を指します。
それぞれ、含まれる工事の内容は以下の通りです。
本体工事費に含まれるもの- 仮設工事費
- 工事に必要な足場や仮設電気、水道、職人用のトイレ設置などにかかる費用。
- 基礎工事費
- 構造全体を支える基礎工事にかかる費用。
- 木工事費
- 構造材や造作材などの加工にかかる費用。
- 屋根・板金工事費
- 屋根の瓦や葺きつけ、雨どいや水切りの取り付けにかかる費用。
- 外装工事費
- 外壁のサイディングや塗り壁など、屋外の装飾にかかる費用。
- ガラス工事費
- 屋外に面した窓の取り付けと防水にかかる費用。
- 左官工事費
- 玄関や洗面、お風呂などのタイル、左官による装飾にかかる費用。
- 断熱・気密工事費
- 壁、床下、屋根などに断熱材を取り付けにかかる費用。
- 木製建具工事費
- 屋内の木製ドア、障子などの加工、取り付けにかかる費用。
- 金物工事費
- ドアノブやドアフック、手すりなどの取り付けにかかる費用。
- 電気・水道工事費
- 家の中の電線や電話線、水道管などの配線、配管にかかる費用。
- 空調工事費
- 空調ダクトや換気口の取り付けにかかる費用。
- 防腐・防蟻工事費
- 構造材を腐食やシロアリから守る薬品にかかる費用。
- 内装仕上げ費
- 内壁、天井に塗装やクロス貼りなどの装飾にかかる費用。
- 住宅機器設備費
- お風呂場やキッチン、トイレなどの設備機器にかかる費用。
- 引き込み工事費
- 水道管やガス管などを土地に引き込む工事にかかる費用。
- 敷き設工事費
- 土地に引き込んだ水道管などを家の内部に引き入れる工事にかかる費用。
- 外構工事費
- 駐車場や玄関までのアプローチや犬走りなどを造設する場合にかかる費用。
- 造園工事費
- 庭の石垣や植栽などを行う場合にかかる費用。
- 屋外電気工事費
- 屋外の照明や給排水の設置にかかる費用。
- 特殊設備工事費
- 太陽光発電や蓄電設備を取り付ける場合にかかる費用。
- 空調設備工事費
- エアコン本体や室外機、換気扇などの取り付けにかかる費用。
- 照明器具工事費
- 照明器具の取り付けにかかる費用。
- カーテン工事費
- カーテンやブラインドの取り付けにかかる費用。
ちなみに、建売住宅や規格住宅などによくある「本体価格1,500円!」などの価格表記は、建築工事費のうち「本体工事費」のみを指しています。つまり、1,500÷0.75=2,000万円と、建築工事費そのものは500万円以上高くなることが考えられますので注意が必要です。
諸費用
諸費用とは、土地・建物には含まれない、別途発生する諸雑費を指します。多くの住宅ローンにおいて、工事請負契約に含まれない費用は融資の対象外となるため、諸費用は自己資金で用意する必要があります。場合によってはかなりの額になることもありますので、あらかじめ資金計画の中で費用に計上しておくことが必要です。
- 印紙税
- 売買契約書や工事請負契約書を作成するために必要な収入印紙です。契約金額にもよりますが、5千円~2万円の税額が一般的です。
- 住宅ローン保証料
- 住宅ローン返済に当たり、信用保証会社からの保証をつけるための手数料です。
- 登記手数料
- 土地や不動産の所有者を登記簿に記載し、所有権を得るための手数料です。
- 登録免許税
- 不動産取得で登記をしたときにかかる税金です。登記手数料とは別に、国に収める税金になります。固定資産税評価額×税率で割り出すことができます。
- 物件検査手数料
- 住宅が国の建築基準に違反していないかを調査するための検査費用です。
- 固定資産税
- 家を所有している人が毎年支払う地方税です。固定資産税評価額は、本人だけが取得できる「固定資産税評価証明書」を市税事務所などで取ってくれば確認することができます。
- 都市計画税
- 都市計画法に定められた市街化区域内に家を所有している人が毎年支払う地方税です。
- 不動産取得税
- 不動産を取得したときに都道府県に支払う都道府県税です。不動産の価格×税率で割り出すことができます。
- 引っ越し費用
- 完成した家に引っ越すために、引っ越し業者などに支払う費用です。
- 家具購入費
- 完成した家に住むための家具、家電の購入費です。
「諸費用」は「建築工事費」の7%~10%になるのが一般的だと言われています。つまり、総予算が2,000万円の場合、家にかけられるお金は1,800~1,860万円、「本体価格」で言えば、1,350万円~1,488万円の家が建てられるということになります。